Review

『愛』という、普遍であり、人間にとって一番大切であろう感情が、
ドスンと大きく響く音をたてながら、私の心に的を得た。

それは純粋に愛しいというストレートなもの。
一人ひとりの人間が、いや人間だけでなくあらゆる全ての生命体が
純粋に愛しいというストレートな感情の基に、表現し、惜しみなく注ぎ、注がれる。

愛が全ての原動力になる。
みんながみんなそう思っているとは限らないが、私はそう思うのだ。
愛によって生まれる優しさ、弱さ、強さ。
そして憎悪。

憎悪は憎悪を生む。

愛するがゆえに、周りが見えず、盲目的に愛を注ぐ者。
愛を失い、憎しみに燃える者。
全てに対して平等に愛を注ぐ事が出来る者。

愛によって生き、
愛によって生かされ、
また愛によって、とてつもない大きな感情が生まれる。

全てが愛。その中には深く語られ、納得できるものもあれば、
それは少なからず利己主義の名の下に共存している事もある。

何故、人は戦うのか。
それによって失われるものは多いのに。
それを理由に戦いはやめよう、というには単純過ぎるだろうか。
戦いによって、自己を喪失し、錯乱し、人間であるべき姿を失う。

正義を貫き悪を挫く、俗に言う”ヒーローもの”が、
悪は滅び正義が統一する概念の基につくられるのならば、
この作品は一風違う概念の基に成り立つのではないだろうか。

この作品を通して、この世界の現状、戦い、そして愛について、
自分なりに改めて考えて見る事が出来たと思う。

*******************

この作品は、紀里谷和明監督作品という事もあって、
製作予告をメディアにて大々的に告知した時から、公開を待ち望んでいた。
予告編からすでに、湧き上がるパワーを感じた。
そして劇場へ。
期待を裏切らせる事もなく、自分が考えていたより数倍もの衝撃とメッセージを受けた。

専門的なことは当然解らないが、映像が素晴らしい事!
荒廃さえ感じられる都市の映像描写には圧倒され、
人物の感情、切なさ、悲しみ、愛しさが痛いほど伝わる幻想的な映像には涙を誘った。

エピソードも確実で解りやすく、全てにおいて完璧な作品。

作品本編中、何度か涙を誘われたが、本編終了後のエンドロールの中間辺たりでどっと涙が溢れた。
人間である以上、このようなテーマについて、考える義務がある。
そう思わせてくれた作品。