私の恩師の中で
私に水彩画を教えてくれた人がいる

まだ幼かった私は
その人に絵を教わりたい一心で
その人の生徒になれた

その人の描く空は、何とも表情豊かで
いつも私はその色を見るたび、感動を覚えた

その人が描くスケッチブックの上部に連ねる配色
クリアな青、水色、白、それだけではない空の表情を映し出す数色の色

幼いながらに悩んだ
どうしたら先生みたいな美しく深い空が描けるのだろう

そして真似た
だが
真似たと思った空の色は、今まで私が描いてきた空の中で
一番表情のない空だった

私の目から映る本物の空も
曇っていくようだった

今、私が描く空は、どんな葛藤もない空
誰の真似でもない
描き方に悩む事もない

私は、太く、柄が長い絵筆の先で、水色をつくり
先端にのせたまま、たっぷりと水を含ませ
一気に空の色を白いスケッチブックに広げる

そしてチューブから出したそのままの白を絵筆の先にしっかりとつけて
絹のような輝きの雲の姿に変える

私の目に映るクリアな空

私は、私の描き方で、私の目から見える空の表情を捉える
私の目に映る美しく大きな空に敬意の気持ちを添えて






キラキラ



きらきらと輝く眩しいほどの水面の光の乱反射
軽やかに跳ねる光が躍動感を示す

美しく微笑む、美しい人にそれを見出し
誰かが綴る言葉にそれを感じ
嬉しさにあふれる透明な涙にそれを見る






たんぽぽ



あの頃、たんぽぽを摘んで

その可憐さと茎の空洞に気をとめた

春に咲き誇るたんぽぽ

その花は春が来るたびに

やわらかな優しい感情を惹きつけ

心を豊かにする

可憐という表情

まだ知らなかったその頃

その花が春を待ち、たえず花を咲かせる事

根という心が深く深く

その大地にしっかりと張りめぐらされている事を






若葉



髪の中を清清しい風が通り
私の髪の毛を揺らす

さっきまでの辺りの風景が
雨上がりの匂いとともに
少し明るくなった頃

ふと目線に映る木を眺めると

若葉が躍動感に満ち
クリアーな雨粒のハンモックになっている

小さな鈴のような音が
聞こえる






笑いたい



私はふと気づいた
私は笑っている

そしてそれがもたらす事は
かぎりなく大きい

笑う事で

心が躍る

笑いたい

いつだって

笑いたい

尊敬すべき人は
その朗らかな笑顔で笑っている

美しい人は
その輝きさえ感じる笑顔で笑っている

愛すべき人は
その愛おしい笑顔で笑っている

私は
私の一番の笑顔で笑っている





左手



あなたは気付いてないと思うけど

私の左手に目をやる
あなたのその悲しげな瞳を

私は気付いている

そっと左手を

私は

あなたの視線から逸らす

悲しげな表情を

追いやるように

その悲しげな表情に表れた心を
同じく痛みを感じるもの言わぬ対象の現実を

私は知らなかった

私の左手に刻まれた
無数の傷が

あなたまで傷付けている事を


傷だらけの左手で
ごめんね


この傷だらけの左手だけど
あなたを抱えきれないくらいの

愛と優しさで包むよ


あなたが惜しみなくその愛と優しさで
私を包んでくれているように










一滴一滴

ゆっくりと

その群れを成しては大地に染み入る

その水に

教えてもらったのは

敬意という尊い言葉

そして意味





以心伝心



それはあなたを見て感じ

また私を見て感じる

心が

ステキに

感じる



この瞬間にも

私の心にはあなたが

あなたの心には私が


いつもいつも

心が手をつないでいる


いつの

どんな

瞬間にも

いつもいつも






雨宿り



トタン屋根の溝から

一定のテンポの音を立てながら

絶え間なく雨が流れ落ちるけど

ここから一歩外に出れば

もっと勢いのある雨模様

でも

目を細めながら

肩を縮めながら

私は勢いよく外へ出よう

はやくあなたに会いたい
から






さらさら



まだ起きたばかりの朝

カーテンを開けると

木々の間に見えるのは眩しいほどの青い空

ふと庭先に

出てみれば

ふわっと

まるで

音を立てたかのような

そよ風が

私の前髪を

さらさらと

吹き抜けた






ハーブ



優しいという
また
癒しの香りという

自然の魅力がいっぱい詰まった
ハーブたち

人はその香りと

それがもたらすステキなトピックスに

心を弾ませる

野を舞う蝶や
ハチドリは

どうなのだろう

ガーデニングの施された素敵な庭の
広がるミントや上を見上げたバジルの葉に

心躍らせているかもしれない

その香りと

それがもたらすステキなトピックスに






田舎



自転車で

毎日のように通る道が
何も変わってない

変わっていても
変わっていないように
見える

夕暮れに

ふと空に目を遣ると
色の表しようのない
美しい色彩の混ざり合った
空と雲の影が
包み込む

鳥のさえずり

木々の揺れる音

風が通る音

耳にはいつも同じ音が静かに流れる

その音と共に
ゆったりとした風が
農面道路の路肩を走る私を通り過ぎ

心地良い匂いを運ぶ





逢いたい



愛しい

この空間にあなたと私
一緒に過ごす時間は
愛しくて

私はただあなたに身を任せる

いつだってあなたに逢いたい

だって

私は

あなたに恋してるから

ずっとずっと
恋してる

愛してると同じく
あなたに恋してる





太陽



風もない午前の川べりで

流れる水を運ぶ水面を

あなたと見てる

大きな岩を優しく包むように

小さな水しぶきをたてて

流れていく

ふと

あなたの肩に寄りかかると

頬にやわらかな

暖かさを感じる

私の腕にも同じ暖かさ

太陽がくれた優しい暖かさ






メロディ



目を閉じると聞こえるメロディは

愛しい記憶

こうやって

あなたもきっと

目を閉じると聞こえてくると

いつも思うよ

愛しい記憶は

そのメロディに乗って

いつまでも色褪せない

これから生まれるメロディも

こんな風に

愛しい記憶を

乗せて行くんだね






硝子



田舎の町のお祭りで
そんな小さなお祭りで

いつも買ってもらってた

硝子細工の小さな動物たち

小さな手で

動物たちを
綿に包んで

大事に大事に宝石箱へ

大人になって

祭りの屋台に
硝子細工の陳列を
いつも探してしまう

時代が変わって

私が幼かった日の
お祭りの硝子細工は

いつのころか

並ばなくなった

その頃の

私の目に映る大人は
違う世界だった

だけど大人になった私の目には

あの頃の硝子細工と

楽しさにはしゃぎ躍る心が

変わらずにずっとある










外には音を立てて北風が

長い間吹き荒れている

そんな北風が

ゆっくりペースの漂う風に変わったら

窓を開けてみる

もう真っ暗な外の景色を

ずっと見ているうちに

だんだんと目が慣れる

慣れた目の先には

揺れる木立

まだ冷たさの残るその風が

なんだか頬に気持ちいい






シロツメクサ



蓮華の花の首飾り

庭先に聞こえるテレビの音

夕暮れ間近のかげぼうし

まるで絵のような
シロツメクサとれんげ畑が
そこにはあって

日が暮れる前には
いつもそこで時間を過ごした

私は蓮華の花を摘み取って
細い茎に繋げた首飾り

隣で姉は

シロツメクサの花を茎を上手に並べて
私の首飾りよりも
もっともっと美しい首飾り

華奢な蓮華の首飾りをつけた私は

決して姉のシロツメクサの首飾りを

羨むことはなかった

ただこの蓮華を私らしいと思い

シロツメクサを姉らしいと思った

今も姉のイメージはシロツメクサ






相思相愛



いつも隣にいて
いつも考えていて

いつも

いつも

心がそばにいる

心が繋がっている

なんて愛おしい
なんて心があたたまる
一瞬一瞬

言葉を発しなくても
わかるよ

あなたも

わかるんだって





素朴



私の頬にさらっと吹き付ける風が
いつもと同じ匂いをしてる

今、ここにいる私が感じるこの風と
周りを見渡すと広がる暖かい景色

買ったばかりの明るい色のマフラーと
いつものジャケット
履き古した少しヒールの高い靴にジーンズ






手紙



あなたに手紙を書いた事が何回かある

手紙というより

伝えたい一言を綴ったメッセージ

頑張って書いた文字を見て

あなたはとても喜んでくれた

心の底からの

私のあなたへの気持ちを手紙にしたい

手紙を書くのを好きな私が

一番手紙を書きたいのがあなた

日常の中で

私もあなたも互いの言葉をうまく理解できないときが

たくさんある

でもだからこそ心が通じている

何よりも絆が強いと私は思っているよ






唄いたい



唄うことが身近になったのは
学生の時

私は唄うことが好きなんだと思ったのは
学生の時

はじめてバンドを組んだのは
学生の時

バンドのヴォーカルとして
本格的に活動したのは
数年後

そのバンドを脱退したのも数年後

私は

自分の目の前にある扉を
開く事が出来なかったんだよ

それはわがままかな

でも私の決意は
正しい

心からそう思う

だから

唄いたい

そう思ったら

自分にはこの声がある

いつでもこの声で
この心で

唄うことができる





色鉛筆



何故だったのか
キャンパスの白い色を消したくるような
原色で絵を描いていた時期があった

クレヨンで
層を重ねて
油性ペンで太い線を重ねて

幻想という文字を

赤、黄、緑、青、黒の原色で装飾した

それは自分でも誇れるような出来栄えで
周りの評価も得た

色鉛筆は使わなかった

パステルも使わなかった

だけど
ふと思い立って
細く背のまばらな色鉛筆で
人物の顔色を色付けしてみた
淡く、重ね、影をつけ

そして木々の緑を円を描くように

木の幹を力強く
また、時に薄く色を広げた

思い描いた以上の
色の重なり合いが
感動するほど綺麗で
心がはほっとする気がした






綺麗



息をのむほどに美しいと
胸がいっぱいになる事も

綺麗
と思わず口をついて出る対象も

その瞬間、現象
それらを

自分の心で感じられる事が
尊いと思えば

綺麗
と連想される物事が
身近に存在する事を

感動
という言葉に置き換える事が出来る






大好き



あなたが隣にいるこんな毎日が

たまらなく嬉しい

あなたを大好きでいることが

こんなにも私を弱くさせている

いつからこんなに弱くなったんだろう

私には驚くべき強さのパワーを持って

あなたに大好きを伝えたい

弱い私が
こんな事言ってる

おかしくて
一人で笑ったり

だけどね
みんな言うんだ

願えば叶うって

努力すれば叶うって

私は私を信じて

強さのパワーを集めよう






紙ヒコーキ



何故かいつも
窓から見える背高のっぽの木の葉は
同じ形をしてる

太陽の光を受けて
葉のふちどりがキラキラひかる

いつも朝になると
窓を開けてはその木に目をやる

木の葉のベッドに
紙ヒコーキを休ませたら

出発するのは
いつになるだろう

きっと居心地がよくて

葉のふちどりのキラキラとともに
真っ白な紙ヒコーキが
これからは
朝になるたび
いっそうキラキラしながら
私の目を眩しくさせるのだろう

いつ出発しても
この木はいつだって君を待ってる










あなたにはじめて見せた
南の海の水面の輝きを覚えてる?

二人で波打ち際の水に触れた

私は
砂の中に埋もれた美しい貝殻も
少し離れた場所に止まっていた車も
その時感じた風も覚えてるよ

あなたと過ごす時間は
何よりも大切だからだよ






走る



心が躍ってつい走りたくなる
まるで子供の頃のように
そこにある全てのもの
目に見える全てのものを
独占したくなる

小走りになっている私の後ろには
いつも
あなたがタバコをふかしながら
ゆっくり歩いてくる

その姿を見るたび
自分を滑稽だと思う
それは心地よい感覚

あなたの軽い
そして早い足には
到底かなわないけど

走るのが苦手な私でも
つい走りたくなる時が
あるんだよ






木漏れ日



丸みを帯びた小さな葉を縁取る光が

こうしてあなたの頬に優しく触れる

ふわふわと

揺れる葉を目を細めながら見上げると

その眩しさについ瞳を閉じる

静かな寝息をたてて

寝ているあなたを見つめるのが好き

ねえ

私が守ってあげるよ






水溜り



いつもあなたのそばにいると
小さく弱々しい私

でもこの
あなたを思う
この心の大きさを

あなたは知ってるのかな

まだ雨上がりの臭いが
なんだか心地よい夕方

水溜りに映る青空が
まだ午前中の青空みたい

こんな風に

あなたといる時間を
つくる全ての要素が

愛しい

そう思って
先に歩くあなたの
上着の裾をそっと掴んだ






気分転換



こんな少しばかりの時間が
私にとって大切なのは
どんな時間でも繋がっていると思えるからなの

例えばいつもは飲まないレモンティの味

ダージリンティの湯気とはまた違って優しく揺れる






アロマテラピー



ローズウォーターの香りが
一番のお気に入り

アロマオイルのように
一滴の雫が
広がって心を潤す

あのレストランのチャイの香り
あなたが自信を持って勧める
美しいパッケージに入った特別なギャズの香り
あなたの故郷の香り










夜中に見る雪が好き

もう真夜中なのに
まるで外は明け方

雪が輝く
輝き照らす