天使とデート

1987年 米
監督:トム・マクローリン
出演:エマニュエル・ベアール
    マイケル・E・ナイト

ロマンティックで、まるでフェアリーテールのような甘いラヴストーリー。

この映画の一番の見所は・・・、
と考えたら全てを比べるのが難しい程。

天使を演じたエマニュエル・ベアールのパーフェクトな美しさ、
ジムを演じたマイケル・E・ナイトの天使に振り回される滑稽さ、
パティを演じたフィービー・ケイツのお茶目な演技、
この作品に出てくるほとんどの登場人物の人物描写が非常に凝っていて
随所に散りばめられるエピソードがホントに面白い。

私が思う、恋愛コメディーの醍醐味とは、
こんなラヴストーリーがあったら最高!
という思想に基付いて、わくわくと胸弾ませながら見る楽しさだと思う。

ジムが婚約者パティとの婚約披露パーティーも終えた(ここで一騒動あったのだが)夜、
彼のアパートメントのプールに見るも美しいブロンドの長いカーリーヘアーの女の子が気を失っていた。
これがジムと天使の出会い。

ジムは羽をケガして、どうやら自分の家に迷い込んだであろう天使をどうする事も出来ずに四苦八苦。
パティという婚約者がいても、彼女の美しさに惹かれていく自分を認めずにいた。

だが、身に危険が及ばぬようにと自宅に隠していた天使の存在は彼の悪友三人組にあっけなく知られてしまい、
ついにはパティにも気付かれてしまう。

三人組は、というと天使を利用して金稼ぎをしようと悪巧み。
天使のロゴの入ったグッズの売り込みに日夜を費やし、適当な時期を狙って天使を誘拐する計画を企てる。
そして、パティ、彼女は天使に(とは解ってないが)ジムを横取りされたと思い込み、
だんだんと狂乱していく。この描写が非常に滑稽なのだ。
彼女の父親さえも天使の美しさに心を奪われ、ビジネスの広告としての天使の獲得に夢中になっていく。

一方ジムは天使をどうにか天に返してあげようといろいろな手段を考えては実行、だがなかなかうまくいかない。

この映画での人物描写を少しあげてみると、
どうやらそれによってこの映画の隅々まで行き届いている
個性のインパクトの強さが窺え知ることができる。

序章から全編にかけて頭痛に悩まされるジム、
フレンチフライが好きな天使、
実は短気で、動揺するとしゃっくりが止まらないパティ、
言動が裏目に出てしまうパティの家の使い(なのかな?)、
あるシーンからすると、おそらく、パティと同じく気性の激しいであろう母親。

これだけでもまずインパクトは充分である。

ここで再びパティに触れてみると、彼女の行動の一生懸命さが、かえって実に滑稽なのだ。
序章では、聡明な、ショートカットが凛々しく、実にしかっりとしたイメージが窺え知る事が出来たのだが、
実はジムに恋するあまり酷く動揺して序章とは別人のように変貌していく。
怒りを抑えられず、感情を爆発させるところからは、逆に可愛らしさまで漂う。

ジムからの弁解の電話に「くたばれー!」と返してみたり、
受話器越しにおもちゃのブザーを応答代わりに鳴らしてみたり、
強めのお酒で気合を入れたり、
カーステレオから流れる「エンジェル〜♪」に反応してヴォリュームタグを力任せに壊してみたり、
いざ決闘、という時に、混乱してパンツの上にアンダーウェアーをはいたり・・・。
と本人は一生懸命なのに実に滑稽なのだ。
私だったらこの作品での彼女には是非、助演女優賞を贈りたい程である。

そんな中ジムと天使は隠れるように山小屋に身を寄せる。
二人のロマンティックな時間。
ジムは自分の作曲家への夢を語り、その情熱は決して消えうせない事を話した。
ジムがつくった音楽でふたりはゆっくりとダンスを始める。

この森の中で天使はもう羽ばたく事が出来る羽を豊かに働かせて大空を優雅に羽ばたく。
懐かしい感覚に心が騒ぐ。
だが彼女が寝ているジムのそばにたたずむと、
その美しい瞳から一筋の水滴が。
今まで感じた事のない感情。
その水滴を拭い、ジムに見せて疑問の表情を見せる天使。
ジムは言う。「分かってる。別れの時だ。涙はツライ時に流れる。」


ジムと天使が別れを惜しむ一方、パティとその家族、三人組、ジムの家族までが
必死になって二人の居所を探している。

場所を突き止めた彼らとジムは一騒動。
だが天使がいない。
小競り合いをしているその時にジムは気を失って倒れこんだ。
そこに怒りをあらわにした天使が罰を与えるかのように天候に変動を生じさせる。
その時はじめてみんな、彼女が天使であった事に気付く。

病院にて、医師はジムの病状を、脳腫瘍が悪化して思わしくない。頭痛に悩まされていたはずだ、と家族に伝える。

病室にてジムは天使にまた会う事ができた。
だが全てを悟っていた。
自分を迎えに来るために地上に舞い降り、思わぬケガにより仕事が全うできずにいたんだろう?
と天使に言う。
「ほかの人も迎えに来るの?僕は嫉妬深い。」というジムの言葉に天使は優しく首を横に振った。
そして美しい羽でジムを包み込む・・・。

三人組が今までの悪事を恥じ、気を落としてジムを見まうとそこに一人の看護師が。
「ジムはじきに良くなるわ、患者さんと二人にさせて。」
と三人組を部屋の外に出るよう促す。

彼女の呼びかけに目を覚ましたジムは、
彼女があの天使であることに気付く。

そして彼女は言う。
「天使の祈りが叶ったわ。神様が休暇を下さったの。
二人でステキな音楽がつくれるわ。」

こんなハッピーなエンディング、
こんなにスウィートなストーリー展開。
切ない思いに涙したり、コメディについ笑ってしまったり
クライマックスにはやはり期待を裏切らない、こんなラヴストーリー、
私には限りなく完璧に見えるのだ。